起業しながら優雅な生活を送っている、チューリップのようなLaaLaa


昨年冬、凍えるような寒い日に参加した忘年会で初めてLaalaaさんと会った。東京にこのような交流会はたくさんある。新しい人と出会うのは簡単だけど、大体の人は交流会後また日常に戻り連絡を取りあうことがほとんどない。
    
二回目Laalaaさんと会ったのは、旧正月中に国内にいる旅人のために開催された「團圓飯」※1の会だった。その場で彼女が芸術関連の事業を立ち上げようとしていることを話してくれ、その場でオンラインサービスを見せてくれた。その瞬間彼女の起業家魂が伝わってきたとき春の匂いがした。

   ※1:「團圓飯(ダンエンファン)」または「年夜飯(ニェンイエファン)」と言って、旧正月の大晦日に家族団らんで贅沢な食事をすること

紫陽花が咲き始め、夏の日差しが感じられるようになった6月、Laalaaさんが創設したオンラインサービス Serendious も正式に運営し始めた。百花斉放のような事業になると確信した。同時にその事業を立ち上げるまでの彼女の人生や仕事などきっと様々な苦労があったと思った。それをどうやって克服して、ここまできただろうと考え始めた。

 

日本の大学への進学を断念し、グラフィックデザインの道へ進むと考え始めた

 

日本との縁は姉から影響を大きく受けている。小さい頃から姉が日本の芸能界に興味を持っていて、ジャニーズ、ドラマ、漫画などに出会い、次第に自分も日本文化を好きになった。高校の時から日本語の勉強を始め、ドラマに影響され、日本で設計空間を学びたいという夢が芽生え始めた。

高校の時に設計空間を勉強するため、日本の大学に進学することを計画した。しかし、家族から遠く離れ故郷を後にする事には不安があったため、台湾の大学に進学することにした。
        

大学時代、学生会が主催のイベントを行う時には、広報ポスターなども必要となってくる。子どもの頃から手作りが好きなLaalaaさんは直系の先輩から影響され、グラフィックデザインを知った。その時、自分のデザインの力、がみんなが作ったものをより魅力的に変えられることに気づいた。それからグラフィックデザインと関連があるアルバイトや、学生会の広報ポスターやステージバックパネルの設計をした。また文学授業のグループ発表も特別に古本風なレイアウトにしたりした。
当時Laalaaさんは日本が出版した設計関連の本を読むのが好きだった。卒業後日本へ勉強することに燃えた。


 

京都へワーキングホリデー、知足の精神と出会い、今の生活をもっと大切にできるようになった

 

大学は日本語学科だったので、当初は日本語学校に通うのはもったいないと思っていた。しかし、会話力をもっとあげたいと思いたし、大学四年の時にワーキングホリデーを申し込み、専門学校が始まる前にワーキングホリデーで京都へ行くことにした。

 学校が始まるまで半年あるので、様々な単発アルバイトを体験した。例えば、チラシ配り、日本酒工場でラベル貼り、和菓子工場の単純作業、印刷工場で印刷梱包などのアルバイトをした。単純作業ばかりだったが、同僚から簡単な日本語で指示をしてもらったり、休憩中に現地のおばあちゃん、おばちゃん、おじさんと雑談したりすることによって、会話力はもちろん、様々な昔の工場のやり方や従業員のルールなども体験ができた。

        

雑談で、印象的だったのは、そのお年寄りたちが海外に行くことはもちろん、地元を離れたことさえないということだった。 彼らは子どもの頃から生活してきた地元を離れようとは思っておらず、今の人生に十分満足している!

    

    
Laalaaさんからみた彼らはたとえ地元を離れたことが無くても今の自分たちの生活に満足していて幸せそうだ;自分は姉のおかげで広い世界を知ることができた。家族の支えがあったから、やりたいことを自由にできている。自分は本当に恵まれていると感じ、この経験を大事にしなければならなと思った。ワーキングホリデーの京都でのアルバイト生活とその後東京での専門学校の生活は必ず充実したものにし、様々なことを体験しなければと思った。

 



デザイン専門学校で、コミュニケーション力と専門力の経験を積んだ

 

何ヶ月間のアルバイトを経て、会話力はかなり上がったけれども。流暢に話せるようになったのは専門学校に入ってからだった。授業では、自分の設計理念や概念を発表する機会が多く、毎回自分の考えをどう伝えるかを練習したので、コミュニケーション力がだんだんと上がってきた。

一方技術面は一刻も早くうまくなりたいとLaalaaさんは思った。まずは、グラフィックデザイン分野でプロになりたいので、一生懸命に勉強した。
​専門学校でCAという特別なクラスがある。Laalaaさんのように大学卒業後専門学校に進学した学生を対象とした選択授業のクラスだ。CAでは産学協同で様々な企画をした。例えば、巣鴨商店会の観光案内地図作成をグループ8人で、全体設計から商店会インタビューや写真撮影まで分担して行った。

 


 
「楽しい」と感じなくなってきたグラフィックデザイン

 

専門学校で積んだ経験を活かして、卒業後台湾系のデザイン会社に入社した。当時社長からLaalaaさんは台湾人で中国語はもちろんでき、その上、日本語もできる。さらに卒業制作もとても面白かったので採用したと告げられた。​

卒業制作は「Laalaaの無責任東京案内書」という大きな本を作った。「作るなら、人生最後に何も気にせず自由自在に作れる時に楽しくやらなきゃ」と彼女は言った。そして、この制作のため東京あちこちに出かけ、東京での生活を撮影し、散文エッセーの形で東京旅を表現した。
            
​

入社後、Laalaaさんは今までの経験を、デザイナーとして、また企画、翻訳、クライアントと交渉の際日本語や中国語を使う時に、活かすことができた。ところが、日本でデザイナーをすると、毎日残業して終電で帰るのが日常だった。もしこのような生活毎日続けて、楽しさやる気を失ってしまったらどのようにして、作品を通じて人に幸せを伝えられるだろうと彼女は考え始めた。

京都で体験した素朴と日本に来た初心は:「生活を楽しむこと、自分を幸せにすること、ほかの人も幸せにできること」。結局、疲れ果てて、自分も楽しくない、生活品質も落ち、人を幸せにすることもできなくなる。それで、一年後に転職することを決めた。

台湾系ティースタンドに転職したらアーティストと店舗を提携する可能性が見えた


当時、たまたま近所に台湾系ティースタンドがオープンするのを見かけた。Laalaaさんは思った。もしデザイナーとしてこのお店で仕事するなら、お客さんの楽しそうな様子を直接見ることができるのではないだろうか。最初は店頭で仕事をしながら、店舗状況を把握し、その後商品開発、企画、マーケティングも携わり始めた。例えば、湯圓(タンユェン)※2という商品はLaalaaさんが考案した。メディアのインタビューなどを通じて、売り上げがかなり上がった。
 ※2:もち米で作られたお団子のようなスイーツ

台湾系ティースタンドで働いた一年、Laalaaさんは友達のためにギャラリーを開いた。そこで有意義なハンドメイドをたくさん見た。例えば、彼女がいつもつけているブレスレットは着物の糸で作られた。このハンドメイド作家は着物の売り上げが減少していることによって縫い糸の使用量も減っていることに気付いた。なかでも縫い糸は非常に美しい工芸品なので、一式なブレスレットを開発した。それで誰でも手軽に日本文化に触れることができる。

残念ながら、このような素敵なものをインターネット上の写真からみても、その良さがわからないので、デザイナー側は売れる場所を見つけられず、生活も厳しくなった。一方、店側も収入を増やすため、店内の雰囲気に似合う雑貨などを販売したいことに気づいた。もし両方をマッチングしたら、店側は販売したい作品を見つけられる上にデザイナー側も売りたい作品を売れるから、こうするとみんなが楽しくなるのではないかと考えた。


起業仲間と知り合え、Serendiousを立ち上げた


その後、Laalaaさんはフランス語クラスの友達を通して、仲間と知り合った。店側とデザイナー側をマッチングするアイデアを仲間に話した。色々と考えた末に、2人は会社を立ち上げることに決めた。仲間が、それならばインターネットでサイトを作った方が店側とデザイナー側をマッチングしやすくなるのではないかと提案してくれた。エンジニアさんと協力してSerendiousを立ち上げた。Serendiousは店内雰囲気に似合うインテリアを置きたい、売りたい店側と作品を売りたいアーティスト・クリエイターたちをマッチングするプラットフォームである。インターネットショップと違い、実際お店が存在していて、さらにお店の雰囲気が作品の良さを引き出す。リアルの店舗に置いていることによって、毎日お客さんと触れ合えるし、お客さんにも実物が見える。これが店内の雰囲気を出しながら、アーティスト・クリエイターたちのオリジナル作品を販売できるオンラインサービスである。

過去の経験は今に繋げられる、実を結ぶ

 

Laalaaさんは気づいた。過去を振り返ってみると、さまざまなことに興味を持ってやってきた。例えば、大学は日本語専攻だったけれど、グラフィックデザインも経験してみた。専門学校の卒業制作の東京ガイドブックも写真撮影や旅行などの経験があったからこそいい仕上げになった。その後グラフィックデザイナーの仕事を得たことにも繋げた。また、起業仲間に出会ったのもフランス語を学びに行ったからだった。そもそもフランス語を学ぶきっかけとなったのは、当時自分の生活に満足できなくて、何かを変えようとおもったからだった。そのおかげで、新しい人と出会いさらに新たなチャンス得た。フランス語以外も空いている時間を利用してフラワーアレンジメント、ゴルフ、漢方などを学ぶ、さらに貿易の資格勉強もしている。彼女にとって、努力をして、さまざまなことに挑戦することにが自分の価値を高めることなのだ。現在、Serendious運営をしながら、別企業の顧問として案件を取って生活している。以前のさまざまな経験があったからこそ、起業中に営業力、企画力、設計、人脈などの能力を活かせている。今まで経験してきたことがエネルギーとなり、結果最高の花を咲かせることができた。


花は心の整理整頓をしてくれる、その中で一番好きなのはチューリップ


Laalaaさんは毎月一回のフラワーアレンジメントクラスで花は気持ちを整理してくれることに気づいた。毎年2月になると教室で彼女が一番好きなチューリップがいつも置いてある。チューリップはとても強靭な花である。一日水をあげなければ、好きな形に捻じれる。水を吸ったらまたまっすぐの状態に戻れる。水分を少しだけ与えてあげれば、きれいに育ていける、とても生命力のある花である。自分もチューリップのように柔軟で粘り強くなりたいと思っている。臨機応変で、水があるかないかにも関わらず、多様な環境でたくさんのことにチャレンジし、みんなで作り上げていき、多くの人々に楽しさ届けられるようになりたいと望んでいる。

Laalaaさんが夢を実現していく姿は、さまざまな困難を切り抜け、花を咲かせて優雅に風に揺れるチューリップのように見える。Serendiousはもうすぐ公開され、これから必ずお店側とデザイナーにウインウインの関係を作り上げることができると信じている。

2018-07-05  オリジナル記事 By Yuan