エリート駐在員から古武道の伝承者へ:無外流居合道 師範・CLARKさん

日本に住んで10年以上が経つと、仕事をきっかけに来日し、数年で東京を離れていく多くの外国人を見てきました。その一方で、中にはこの地に留まり、仕事以外の活動を通じて日本文化に深く関わりながら、日本に根を下ろすことを選ぶ人たちもいます。

Clarkさんと出会ったのは、友人の紹介でした。アメリカ生まれの彼は、仕事の関係で縁あって来日しました。キャリアが一段落したとき、彼は故郷に帰るのではなく日本に留まる道を選びました。その多くの時間を彼が情熱を注ぐ「居合道」に捧げるためです。

 

東京へ来たきっかけ

 

Clarkさんの人生を貫く二つの情熱は「武道」と「旅」です。アメリカの大学で松濤館空手を学び始めた頃から、いつか東京に長く滞在し、現地の生活を体験しながら武道を探究したいと願っていました。大学卒業後は医薬品業界に就職し、ある転機をきっかけに中華圏の責任者として東アジアへ赴任。中国で数年を過ごした後、アジア太平洋地域の統括業務に携わることになり、12年前、社内異動を機に念願の東京へと移り住みました。

 

無外流居合道との出会い

 

来日後も松濤館空手の稽古を続け、友人の紹介で剣道を始めます。4年間剣道に打ち込んだ後、日本で知り合った武道仲間を通じて「無外流居合道」と出会いました。

竹刀で競い合う剣道とは異なり、無外流は400年の歴史を持つ古流剣術であり、実戦と心身の合一を重視します。その修練体系は主に以下の3つの柱で構成されています。

  • 型: 実戦を想定した一連の動作の演練。
  • 組太刀(剣術):攻防技術を学ぶ対人稽古
  • 試し斬り: 真剣で巻藁を斬り、刃筋と力の伝わり方を検証する。

 

無外流は技術の向上だけでなく、いかなる重圧下でも心身の均衡を保つ精神力の鍛錬にも重きを置いています。

 

外国人師範としての歩み

 

 

海外にも多くの無外流道場がありますが、日本国内で外国人が師範となる例は依然として稀少な存在です。そこには言語の壁だけでなく、日本国内であっても居合道が他の武道に比べて一般に馴染みが薄いという背景があります。

Clarkさんは日常会話レベルの日本語力を持っていましたが、専門的な指導は容易ではありませんでした。しかし幸運にも、似た境遇を持つ外国人指導員と出会い、共に切磋琢磨できる環境があり、それが大きな支えとなりました。

数年にわたる修行を経て、無外流の三つの分野すべてで指導水準に達したClarkさんは、正式に「師範」に昇進。さらに流派の「伝承部」にわずか8名のメンバーの一人にも選ばれ、無外流の継承と指導の重責を担っています。

道場における彼の役割は多岐にわたります。

  • 宗家の補佐および日常の稽古指導
  • 海外門下生との架け橋
  • 今後の普及活動のプランニング

 

武道が人生に与えたポジティブな影響

 

 

空手から始まり居合道へと続く武道の道がClarkさんにもたらした最大の恩恵は「自信」を築くことだったと言います。右も左もわからない状態から、膨大な時間とエネルギーを費やして技を習得していく。その過程が、揺るぎない自己肯定感へと変わっていく。このマインドセットは道場の中だけにとどまらず、仕事や私生活における新たな挑戦へとつながっています。

また、武道を通じて得た「縁」も大きな財産です。世界各地を旅する際、彼は現地の道場を訪れ、稽古を通して友人も得てきました。また彼を居合道の世界へ導いてくれた日本人の友人は、後に彼が日本の永住権を申請する際の身元保証人にもなってくれました。

さらに意外な収穫もありました。ビジネスの場において、言葉が完璧ではなくとも、道場での稽古を通じて得た日本の伝統文化への深い理解と敬意が、相手との距離を縮めてくれたのです。正しいお辞儀や正座といった細かな所作を理解していることに、日本のビジネスパートナーに驚きを与えたことも少なくありませんでした。こうした一見小さな礼儀作法が、信頼関係を築くための強力なツールとなりました。

 

未来への展望

 

数年前、Clarkさんは長年勤めた会社組織を離れ、フリーランスとしての道を歩み始めました。現在は、インターナショナルスクールの生徒に向けた英語・数学の家庭教師や旅、そして何よりも大切にしている「無外流居合道の普及」に時間を充てています。

無外流は「古流」という伝統的な枠組みにありながら、道場は非常に開かれた姿勢を持っています。国籍や社会的身分、身体的な障害の有無に関わらず、志があれば誰でも受け入れる柔軟性を持っています。現宗家の新名氏は、かつて右手が不自由な門下生のために、その人に合わせた独自の技を編み出したこともあります。

この精神を受け継ぎ、Clarkさんが今最も力を入れているのは、東京在住の外国人コミュニティに居合道の門戸を開くことです。現在、都内の道場で英語によるクラスを開講しているほか、日本語以外の言語による普及活動も積極的に準備しています。

武道の探求に加え、Clarkさんは国際唎酒師の資格も取得し、東京での暮らしを存分に満喫しています。かつては4年ごとに拠点を変えていた「ノマド」のようなキャリアを歩んできた彼が、気づけば東京に腰を据えて12年以上が経ちました。自らの情熱を見出し、地域と深く繋がることができれば、外国人であっても、この大都会でオアシスを見つけ、東京に新たな多様性を与えることができます。Clarkさんのその生き方が証となっています

 

 

無外流居合道の紹介

http://mugairyu-international.com/mugai-ryu (英語)

https://www.mugai.or.jp/ (日本語)

https://www.instagram.com/tokyo.international.kenjutsu/  (Instagram)

 

Clarkさんの居合道クラス

https://www.meieikan.com/home-7

 

(中文) 從外派菁英到古武道傳承者 – 無外流居合道師範的 Clark

(English) Clark: From Corporate Expat to Iaido Master

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